GSCの歩み
Genomic Sciences Research Complex ― 日本の将来に持つ意味
和田 昭允
日本はGNP第2位――欧州・米国と並ぶ3極の一極です。恵まれたものにはnoblesse obligeがあり、人類の文化・学術への、目先の損得を度外視した貢献が世界から期待されています。
科学データーには“腐る”と“腐らない”とがある。前者は年とともに意味が薄れてゆくが、後者は、それこそGSCenterが積み重ねてきたものです。何百年経っても、DNAの塩基配列やタンパク質の原子座標は変わらず、いつの日にか重要な意味を発見してくれる
優れた研究者達を待っています。学問の本質に不案内で近視だと「悉皆的計測は無意味」とか「対象を絞って計測しろ」などと無邪気に言う。未開の沃野をあたかも知っているように、浅はかな知恵で区切るのは不遜で有害無益。生命は茫漠として偉大です。
戦略の最高の古典「孫子」は教えます。
彼を知り己を知れば、百戦して危うからず、彼を知らずして己を知れば、一勝一負し、彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず危うし。
“彼”は、ゲノム情報の実体化である物理相互作用と化学反応のOmic Space――地球環境を生き延びる膨大な智恵と戦略の宝庫です。その巨大さを知らなければ、世界競争での全敗は必至。
“己”は「物理・化学計測」と「数理解析」の力です。これに近年、X線自由電子レーザー※1とか10ペタFLOPS級次世代スーパーコンピュータ※2という頼もしい豪腕も参入しました。
私はこの“彼”と“己”をGSCenter 発足(1998)にあたって明示し、センター経営の基盤としました。その後10年を経てセンターという硬い組織は、サイエンスの流れに対応すべく発展的に改組されました。
もっとも強い者が生き残るのではなく,もっとも賢い者が生き延びるでもない。
唯一生き残るのは,変化に適応できる者である。 チャールス・ダーウィン
“彼”と“己”の基本認識はGSComplexが引き継ぎ、この組織の持つ柔軟性は、オール日本の研究者の同志的連携を可能にします。そして今後GSComplexは「Omic Space概念」と「腐らないデーター開発」というGSCenterの実績と伝統をさらに発展させ、日本と世界にその存在感を示して行くでしょう。
生命をその根源から理解しようとしている皆さん、21世紀モデル “Research Complex”を、理研の伝統に書き加えようではありませんか!